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できれば「キャンセル料」なんてほしくない。(part2)

できれば「キャンセル料」なんてほしくない、って言葉は、
裏返せば「お願いですから、キャンセル料がかかる期間に、
キャンセルしないでほしい」ということでもあります。


それでも、ご予約いただいた方の都合で、この期間にキャンセルの連絡が入ります。
オーベルジュメソンでは、次のように対応します。
「キャンセル料がかかりますが、それでもキャンセルでよろしいでしょうか?」
例外なく、どんな理由であろうと変わりません。
100%の確率です。

もちろん、それでもキャンセルされるかどうかの判断は、
キャンセルを申し出られた方の判断にゆだねます。


メソンの場合最長3ヶ月、予約という約束を守り続けます。
宿泊日10日前からキャンセル料がかかりますが、
それ以降は、キャンセル分が別の予約で埋まる可能性が、
極端に低いから、という事情によります。

この夏にこんなことがありました。
満室がつづくある日の朝食時、
一組のお客さんが「どうもエアコンの調子が悪いみたいです。冷えないんです。
わたしたちは、なくても大丈夫でしたけど」とおっしゃた。

確認しても確かに冷えない。
血の気が引きました。

エアコンのきかない部屋にも、予約が埋まり続けています。
連日、とてつもない暑さが続いていました。
メソン内では、代替の部屋は準備できません。

手分けをして、周辺の宿泊施設の空室情報を確認。
修理では間に合わないので、エアコンの在庫をもち、
その日のチェックインまでに取替え工事が完了できる電気屋さん探し。

2~3時間、電話をかけまくり、ようやく1軒の電気屋さんから、
「できるかも」という返事をもらえます。

エアコンの取替えが間に合わなければ、
どこかの宿泊施設で代替の部屋が確保できた場合でも、その部屋代はメソンが負担。
代替の部屋すら確保できなければ、交通費・ガソリン代、
その上お詫び料のようなものも覚悟はします。
その一組の収入が得られない上、上記の負担がかかるという意味で、
ダブルパンチです。

宿泊施設側は、「約束を守る」ために必死なのです。



もう一つ、お伝えしたいのは「どんな理由であっても」というポイントです。

キャンセル料適用期間に入ってからのキャンセルは、
きちんと理由が添えられることがほとんどです。

オーベルジュメソンでも以前は、前述のブログのように、「おもいやり」の気持ちで、
キャンセルの理由でキャンセル料を請求するかどうかを判断していました。
しかしある時期から、「キャンセルの理由」による判断はやめることにしました。


お客さん側からのキャンセルには、本当にさまざまな事情があります。
私たちはフツーの人間ですから、共感できる理由もあれば、
「そんなことで……」というようなこともあります。

いずれにしても、ある理由による判定を私たちがすることになります。
その判断に基づいて「よくわかりました。キャンセル料は免除ということで」
とか、「その理由では納得できません。お支払いいただきます」とか。

しかし、フツーの人間は「その理由では納得できません。お支払いいただきます」とは言えない。
みなさんも、面と向かってこういうセリフが言いにくいのは、ご理解いただけると思います。


仮にがんばって言うとしても、私たちには何が理由として合格か、
不合格かの基準が必要になります。
「子どもが熱を出したんで。行けなくなりました。」
「お子さんの熱は何度ですか?」
「37.5度なんです。」
「残念です。キャンセル料の免除は38.5度からになります。」
なんてやりとりに、現実味はありません。

だれが入院したらOKなのか?
だれの葬式ならOKなのか?
台風がどこまで来ていたらOKなのか?

世の中のあらゆる事象に対して、「合格ライン」を引くことになります。
不可能です。

「おもいやり」の気持ちによる判断によると、
現実にはキャンセル料適用期間中のキャンセルは、すべて素通りとなります。

この現実に気づいたとき、愕然としました。
予約という行為の軽さとともに、
なんと立場の弱い業界なのかと。

宿泊業界というのは、
会ったこともない人からの予約だけで仕事を成立させます。
予約時のお名前、住所、電話番号などが実在するのか、
本当の情報なのかも確認しません。

予約を100%信頼した上で、数ヶ月も「約束を必死に守り続ける」という、
実にリスク満載の業界です。
そんなリスキーな仕事で、私たちは暮らしを成り立たせていきます。


オーベルジュメソンはキャンセルに関して、
私たちが判断することをやめました。

「キャンセル料がかかりますが、それでもキャンセルでよろしいでしょうか?」と、
お客さんに判断していただく。全権委任です。

例外なく、どんな理由であろうと変わりません。
キャンセルの「理由」に、キャンセル料を請求するのではなく、
キャンセルという「行為」に、キャンセル料を請求しているのです。
















by mesonbox1 | 2015-11-21 16:37